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特集【アートギャッベものがたり vol.2】イランに伝わる絨毯の歴史

第8回にわたりご紹介するアートギャッベの物語。
これを読めばアートギャッベの全てが分かるはずです。

第2回目、イランに伝わる絨毯の歴史についてご紹介します。

 

目次

  • ギャッベの歴史、オールドギャッベの魅力
  • ギャッベを語る上で欠かせない、ペルシャ絨毯

ギャッベの歴史

ギャッベは、遊牧民カシュガイ族の暮らしの中で欠かせない生活道具です。
はっきりとした年代等は分かっていませんが、およそ3000年前から暮らしに根付いていたといわれています。

カシュガイ族は、半年に一度移動をしテントで暮らす遊牧生活を送っているので、寒暖差のある厳しい環境にウールでできたギャッベは必需品でした。
簡単に持ち運びができ、岩場で使える頑丈さも備えているので代々受け継ぎ使われています。

ギャッベはイラン国内で誰もが知る存在ですが、日常的に使う生活道具であるため価値は評価されにくく、国外でもほとんど認知をされていませんでした。
ですが、今から約80年程前にイラン人の絨毯商によって見出され、その後世界に広まっていったのです。

写真は40年物のオールドギャッベ。
王や権力を表すライオンと、菱形のメダリオン…
目を表す魔除けの文様が織り込まれています。

オールドギャッベは、その色柄や作りから先人たちの暮らしぶりや思想を垣間見ることができ、現代のギャッベとは異なる独特の文様や色遣いなども魅力のひとつだと思います。

また、魔除けの文様が隙間なく織り込まれているものを多く目にします。
絨毯の中に余白があると、そこに魔の手が入り込んでしまう…と謂れがありました。家族の暮らしを危ぶむような邪悪で目に見えないものや、天敵である狼などの動物から身を守るために魔除けの模様を沢山織り込んでいったのです。


・世代を超えて受け継がれてきた絨毯

 

一家の大黒柱のような生命の樹が宿る、100年使い込まれたオールドギャッベ。
ボー・デコールの初代選定人がイランで惚れ込み、譲り受けてきたものです。

家族を傍で見守ってきた背中のような懐の大きさを感じる一枚ですが、擦り切れている部分は一家の主であるお父さんの特等席だったのでしょうか…。
そんな想像の膨らむ、100年もの間、多くの歴史を刻み乗り越えた力強さの感じられる一枚です。

一方で現代の日本では、ものを大量に作って消費する時代から、ものをなるべくもたない暮らしや、一つのものを永く大切に使いたいという考えをする方が増えてきたように感じます。
アートギャッベもまさにそうだと思います。
生涯を共に使い、パートナーのように楽しんで使うもの。

使い込むことで愛着が生まれ、日々の何気ない喜びを気付かせてくれる存在だと思います。そういう物は世の中を見渡すと、思いのほか少ない気がします。

 


ギャッベを語る上で欠かせない、ペルシャ絨毯

手織りの絨毯は約3000年前に織られたものが現存しています。

イランのペルシャ絨毯文化が盛んになったのは約500~600年前からです。大変古くからイランの伝統工芸として繁栄してきました。

ここでは、ギャッベを語る上では欠かせないペルシャ絨毯を大きく取り上げます。

ペルシャでの絨毯の用途は本来、モスクでお参りをする為に敷き詰めて使われるものでした。

それから、王宮に献上されるものとして作られ、行く行くは商業的にも発展していきました。

イランの世界遺産ペルセポリスに彫刻されたお供え物を持ち王宮に向かう人々の壁画

ペルシャ絨毯はシルクロードを通じ、イランからインド・パキスタン・アジア圏等に広まっていきました。日本に本格的に手織り絨毯が広まったのは約300年前と言われています。


・ペルシャ絨毯の工程について

ペルシャ絨毯の織り方は、ギャッベとスタイルが異なります。

ペルシャ絨毯は写真のように織り機を垂直にセットして、数千と張った経糸に緯糸を結ぶスタイルで織り上げられます。ギャッベを織る遊牧民族のように織り機を組んで解体して持ち運ぶ必要がないので、より繊細なデザインを織り上げることができるのです。

繊細なデザイン画を基にしていて、それぞれのペルシャ絨毯工房で意匠紙と言われるデザイン画のパターンをもっています。
デザイン専属のデザイナ―もおり、その工房それぞれの特色をもったペルシャ絨毯が生まれているのです。
文様は主にモスクのタイルのように抽象的な動物や魔除け、繁栄を願う文様が織り込まれています。

織子さんの熟練の技術と丁寧な仕上げも加わり、繊細で狂いもありません。
ギャッベのような素朴さとはまた違った完成された美しさが、ペルシャ絨毯にはあるのです。

 


・守り続ける伝統の技

地方により、デザインや素材などの特色をもっており、主要産地は大きく分けて5つあります。

・芸術の街と呼ばれるにふさわしい古代都市、有名工房を連ねるイスファハーン
・古くから王宮用の絨毯工房が発展していた技術は最高峰のカシャーン
・濃淡のブルー、ベージュ、レンガ色がベースのカラーからなるデザインが特色のナイン
・シルクをメインに海外でも人気を集めるクム
・ペルシャ絨毯文化の復興を担った工場で作る機械織りの絨毯が多くを占めるタブリーズ

それぞれの地方に、工房が幾つか分布しています。

コピー品だけを織る地方などもありますので、注意も必要だそう。

また素材はウールとシルクで、よく日本で目にするのはシルクが多いかもしれません。
現在、ペルシャ絨毯の大半は海外に輸出するために織られており、生産量の約80%は輸出を占めています。

 


・ペルシャ絨毯のルーツ、華麗なルリバフト

アートギャッベを見ていると、素朴で優しい雰囲気のギャッベの中に時折ペルシャ絨毯のような繊細な文様が織り込まれた絨毯がいくつかあります。ルリバフト

これは「ルリ族」という民族が織ったギャッベ「ルリバフト」です。

よくお客様から「ペルシャ絨毯みたいですね」と言われることがありますが、実はこのルリバフトこそがペルシャ絨毯のルーツとも言われております。

伝統的で繊細な美しい文様やデザインと、緻密な織りの技術が卓越しているルリバフト絨毯。

「ザクロの樹」
イラン原産の果実ザクロ。ギャッベでは子孫繁栄の意味を表します。
実があちこち、上や横や下を向いていますがこれにも意味が隠されています。
輪廻転生を表し、熟れて地面に落ちた実は、樹の一部となり循環していくことでしょう。

ルリ族は定住民族であり、故に織りの技術は卓越しています。また、血筋を大切にする部族でもあるので、年々織り手の方が減っているのも現状です。希少性・価値も高まっています。

美しく細かな文様からペルシャ絨毯みたいと言われることもありますが、大きく異なるのはその色ムラです。ペルシャ絨毯では決して許されないこのギャッベ特有の色ムラがルリバフトの魅力でもあります。繊細で緻密な柄と、草木の温かみある独特の風合いの組合せは溜息が出るほど美しいです。

ルリバフトは、本来のギャッベの素朴な美しさ+ペルシャ絨毯のような品の良さのどちらも楽しめる絨毯なのです。

 


playlist_add_check まとめ

 ギャッベには遥か昔からの先人の知恵が詰まっている
 受け継ぐ暮らしは理に叶っている

 ペルシャ絨毯はイランの伝統工芸の最高峰、イラン人の誇りである

 

アートギャッベは2010年にユネスコの無形文化遺産にも選ばれています。
イランの人々だけでなく、他国の方々の暮らしにも馴染む魅力が沢山あります。

ギャッベには深い歴史がありますが、新たに歴史を刻むのは自分自身です。
気に入ったギャッベをお家に迎え入れた日からがスタートです。
末永くお使いいただき、かけがえのない家族や自分の宝物になっていってくれることを願います。

特集【アートギャッベものがたり】

 

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